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アイシングは回復効果もある?冷やす治療方法「全身クライオセラピー」とは

足を冷やす男性

2019年10月07日更新

この記事のポイント

・アイシングは、Cryotherapy(クライオセラピー)の一つであり、患部を冷やす治療方法。
・アイシングのやり方は氷を当てたりアイスバスなど様々あり、時間は15~20分程度が良いとされているが個人差がある。※
・スポーツ選手などによる体験から、アイシングは回復を早めると言われている。
・行う際は必ず指導者・治療者の意見を聞き、正しい使い方が大切

アイシングとは?アイシングの方法

アイシングとは、氷や保冷剤などを使って冷やすことを指します。

野球中継で、投手が登板し終わった後にベンチに戻り、大きな氷嚢もしくは氷を入れた袋を肩にあてている光景が良くテレビに映ります。これがアイシングです。

アイシングのやり方は、基本的にはビニール袋に氷を沢山入れ、痛む箇所や使った局部にあてます。
また使った局部が大きかったりすると、アイスバス(Ice Bath)等も使います。
桶に氷と水を入れ、その中に下半身や局部を浸け冷やす方法です。
大きさに違いがありますが、これもアイシングにあたります。

アイシングは、急性外傷・スポーツ障害ともに15~20分程度の実施が望ましいとされています。
肌などの痛みの感覚が冷たさで感じなくなってくるのが15~20分程度だからです。
冷えていく感覚は個人差があるため、必ず正しい知識の元で行いましょう。

アイシングは治療分類だとCryotherapy(クライオセラピー)にあたります。
Cryo-:冷やす、Therapy:セラピーという言葉なので、氷嚢で冷やす方法以外にも、冷やす治療方法はクライオセラピーにあたります。その他のクライオセラピーの例ですと、アイスマッサージやGameReady等もクライオセラピーに分類されます。
 

アイシングは回復を早める?

RICE(ライス)という言葉を聞いたことがありますか?
トレーニングとスポーツ医学業界では有名な単語です。
この単語はR=Rest(休息)、I=Ice(冷やす)、C=Compression(圧迫)、E=Elevation(挙げる)という単語の頭文字をとってつくられた用語です。

打撲や捻挫の時、「怪我をしたらすぐに冷やせ!」なんて事を聞いたことがあると思います。
これは、アイシングにより内部出血を抑えたり、炎症を抑えて回復を促すというセオリーに基づいています。
このアイシングですが、スポーツ&トレーニング業界で「アイシングをすると回復が早まる」と言われたりもしています。

その例の一つが、先ほども挙げたアスリートの例です。
野球選手のみならず、サッカー、ラグビー、アメフト、アイスホッケーなど、全ての競技で使われるIce Bath(アイスバス)もその一つです。
こちらは下半身を全て冷やすのに使われる事が多く、先に挙げたスポーツでは多くのアスリートが使っている傾向があります。
「アイシングによって回復が早まった」というのは、プロアスリートがクライオセラピーを体感した後に言い出したのがきっかけだと言われています。

最近ですと、サッカー選手のクリスティアーノ・ロナウドが大きいマシン(クライオボディ/クライオサウナ)に入って冷却しているというのが話題になりました。
それでは論文を参考にしつつ、本当に「アイシングは回復を早める」かどうか確認していきましょう。

クライオセラピー、アイシングの効果

クライオセラピーとは、傷めたり、酷使しすぎたりして炎症を起こしている患部を、様々な方法で冷やすことによって、その炎症熱を下げ、痛みを緩和していく方法です。
熱を持った患部は冷やされることによって代謝が落ち、細胞が不活性化します。
これにより二次的低酸素障害を最小限に抑えこむことができると考えられています。
さらに、患部を冷やすことによって、麻酔と似た効果があり、痛みを緩和することができます。

クライオセラピー、アイシングの効果実例

※行う場合は必ず専門家の指導の元で行いましょう。

Hausswirth1らの研究によると、9人の上級者ランナーをトレッドミル(ランニングマシーン)でトレイルラン(Trail Run)をシュミレートして3回のトレーニングを行い、遅発性筋肉痛を起こさせました。
9人を治療グループ別にランダムにわけ、全身クライオセラピー治療、遠赤外線治療と偽の治療(普通の温度の部屋で座るだけ)の3つのグループを作りました。
これらの治療をエクササイズ直後、24時間後、48時間後に行いました。
全身クライオセラピーは温度がコントロールされた部屋(-10, -60と-110℃)に徐々に身体を慣らしながら入っていき、最後の-110℃の部屋で3分間完全静止でいるものです。
回復が促されたか測るため、Maxの筋等張性収縮(以下MVC)、Creatine Kinase(遅発性筋肉痛が起きた時に血中に出る物質、以下CK)、痛み・疲労感(100点満点での自己評価)を実験前、エクササイズ1時間後、24時間後、48時間後にチェックし比較しました。
結果、実験開始前のMVCはどのグループでも統計的な違いはありませんでしたが、全身クライオセラピーを受けたグループのみは1時間後にMVCを回復しはじめました。

ただCKはどのグループも等しく上昇し、どのグループも同じように減少していきました。
また痛み・疲労感はどのグループもエクササイズ直後に上昇しましたが、全身クライオセラピーを受けたグループは1時間後に痛み・疲労感共に大きく減少しました。

よって研究者らは、全身によるクライオセラピーは筋肉のダメージを軽減するには至らなかったが、痛み・疲労感と筋収縮を回復させるのに役立つと結論づけました。

またPournot2らの研究で、Hauswirthらと同じく全身クライオセラピーを11人の良くトレーニングされた被験者(マラソン大会、トレイルランに参加などの上級ランナー)に与え、治療無しのグループと比べました。
全身クライオセラピーを可能にする機械もHauswirthらの研究と同じ物が使用されました。血中にあるCytokines(炎症が起きているときに出る物質)をエクササイズ前と後、そして96時間後を比較しました。結果、全身クライオセラピーグループは血中のCytokinesレベルを減少させることが出来ました。よって研究者らは、エクササイズ直後の全身クライオセラピーは炎症のレベルを下げることによって、何もしないより回復を促すと結論づけました。

しかしながらCrystal3らの研究では、同じような結果はみられませんでした。
健康維持程度に運動をしている20人の被験者(クライオセラピーの経験がない)を対象に、10人はIce Bath(5℃)を20分、他の10人は何もしないという2つのグループを作り、膝伸展筋群のpeak torque(ピークトルク)、痛み、血液サンプルをエクササイズ直前、1、6、24、48、72時間後を比較しました。
血中サンプルではChemokine ligand 2(怪我や感染が起こった時に出るタイプのCytokine)量を観察し、エクササイズ後の炎症を比較するために調べられました。
結果、エクササイズ後の膝伸展筋群のピークトルクは両グループとも同じく上昇し、両グループに違いはありませんでした。
痛みのレベルも両グループとも同じく上昇し、同じく減少し、違いはありませんでした。
またChemokine ligand 2も両グループとも上昇しました。
しかし6時間後はIce Bathを受けたグループは、何も受けなかったグループに比べChemokine ligand 2のレベルが少なかったという結果が得られました。

しかしながらこの結果は、統計学上では大きな違いにはなりませんでした。
よって研究者らは、Ice Bathは筋力と痛みの回復にはつながらないが、Chemokine ligand 2を和らげる可能性はあるかもしれないと結論づけました。

適切なやり方でアイシングは回復効果もある

このように論文をみてみると、全身クライオセラピーは回復を早める効果が期待できます。
また特にアイシングの経験がないような患者が、Ice Bathを行うとCrystalらのような結果になるのかもしれません。
そのためクリスティアーノ・ロナウドが使っているような、クライオボディやクライオサウナ等の全身クライオセラピーの人気があがってきているのではないでしょうか。

またIce Bathは心地悪いですし、時間も長いです。
これも全身クライオセラピーの人気が出た理由の一つだと考えられます。
まだ研究は必要ですが、これらの論文から全身クライオセラピーの方は、回復を早める効果が期待できます。

使う際は必ず指導者・治療者の意見を聞き、正しい使い方をしましょう。

 

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IBMA認定パーソナルトレーナー資格取得コース

[参考記事]
スイッチをオン・オフ!呼吸筋トレーニングで体幹インナーマッスルを整える!
ヒップアップのトレーニングには、何が効果的?
キング・オブ・トレーニング!「デッドリフト」と「スクワット」の違いとは?

 

[参考文献]
1.Hausswirth, C., Louis, J., Bieuzen, F., et al. (2011). Effects of whole-body cryotherapy vs. far-infrared vs. passive modalities on recovery from exercise-induced muscle damage in highly-trained runners. PloS ONE. 6(12): e27749. Doi:10.1371/journal.pone.0027749
2.Purnot, H., Biuezan, F., Louis, J. et al. (2011). Time-course changes in inflammatory response after whole-body cryotherapy multi exposures following severe exercise. PloS ONE. 6(7): e22748. Doi:10.1371/journal.pone.0022748
3.Crystal, N., Townson, D., Cook, S., LaRoche, D. (2013). Effect of cryotherapy on muscle recovery and inflammation following a bout of damaging exercise. Eur J Appl Physiol. 2013; 113(10). DOI: 10.1007/s00421-013-2693-9

この記事の著者
根城祐介

監修者

根城祐介

[経歴]
米国ノースダコタ州立大学大学院在学中、アシスタントアスレティックトレーナー兼ストレングス&コンディショニングコーチとして活動し、大学院卒業を期に帰国。学生アスリートのみならず、Canadian Football League(CFL)やNational Hockey League(NHL)のプレーヤーの指導経験を生かし、多くの現役プロアスリートのパーソナルトレーニングを担当。資格スクール講師やワークショップで多数のパーソナルトレーナーを輩出しているトレーニングの専門家。

・ミネソタ州立大学モアヘッド卒業
・ノースダコタ州立大学大学院修了
・IBMA(国際ボディメンテナンス協会)顧問
・USHL Fargo Force アイスホッケー、グラジュエイト・アシスタント・アスレティックトレーナー兼ストレングス&コンディショニングコーチ(2012-2014)

[保有資格]
・IBMA認定パーソナルストレッチマスターインストラクター
・加圧国際大学認定 加圧トレーニングインストラクター
・学士(アスレティックトレーニング・エクササイズサイエンス)
・修士(アスレティックトレーニング)
・全米公認アスレティックトレーナー(ATC)
・全米公認ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(NSCA-CSCS)
・グラストンテクニックプロバイダー(Graston Technique Provider)
・セレクティブファンクショナルムーブメントアセスメント(SFMA)


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根城祐介

[経歴]
米国ノースダコタ州立大学大学院在学中、アシスタントアスレティックトレーナー兼ストレングス&コンディショニングコーチとして活動し、大学院卒業を期に帰国。学生アスリートのみならず、Canadian Football League(CFL)やNational Hockey League(NHL)のプレーヤーの指導経験を生かし、多くの現役プロアスリートのパーソナルトレーニングを担当。資格スクール講師やワークショップで多数のパーソナルトレーナーを輩出しているトレーニングの専門家。

・ミネソタ州立大学モアヘッド卒業
・ノースダコタ州立大学大学院修了
・IBMA(国際ボディメンテナンス協会)顧問
・USHL Fargo Force アイスホッケー、グラジュエイト・アシスタント・アスレティックトレーナー兼ストレングス&コンディショニングコーチ(2012-2014)

[保有資格]
・IBMA認定パーソナルストレッチマスターインストラクター
・加圧国際大学認定 加圧トレーニングインストラクター
・学士(アスレティックトレーニング・エクササイズサイエンス)
・修士(アスレティックトレーニング)
・全米公認アスレティックトレーナー(ATC)
・全米公認ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(NSCA-CSCS)
・グラストンテクニックプロバイダー(Graston Technique Provider)
・セレクティブファンクショナルムーブメントアセスメント(SFMA)


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