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関節可動域(ROM)を広げる必要があるのか?体が柔らかいことのメリット・デメリット

柔軟に前後開脚と後屈を行う女性

2019年09月25日更新

この記事のポイント
 
・通常の人の日常生活では関節可動域を必要以上に広げる必要はない

・アスリートの場合、競技特性を考慮して関節可動域を広げる必要があるが、スタビリティとのバランスが大切

・関節可動域を広げるには、長い時間かけてストレッチするのが効果的

・ストレッチは、関節可動域を広げることだけが目的ではなく、他のメリットも多い

・関節のポジションを理解することは、ボディーワーカーにとって必要不可欠

・関節のポジションを整えてから筋肉にアプローチすることによって、ストレッチの最大限の効果が期待できる

・身体の「固定性」を高めるトレーニングも必要

関節可動域(ROM)とは?

関節可動域」は、英語ではRange of Motion(レンジ・オブ・モーション)と表記します。
「Range=範囲」で「Motion=可動」という意味です。つまり関節が動く範囲を意味します。
例えば、肘を目一杯伸ばした状態から、完全に曲げた状態を、肘関節の関節可動域(ROM)と言います。
この関節可動域は各関節に存在します。
”関節可動域がアップ”=”可動範囲が広がった”ということです。

関節可動域(ROM)を広げる必要があるのか?

「ストレッチ」=「体を柔らかくする」
これは、一般的にも浸透したストレッチのイメージだと思います。
体が柔らかいことは、しなやかで美しいイメージがあり、一度は憧れるのではないでしょうか?

「体が柔らかい」というイメージのほとんどが、股割りができるなど、関節の拡がる範囲が大きいことを意味しているはずです。
では、本当に「関節可動域(ROM)」を広げる必要があるのでしょうか?

まず、日常生活について考えてみましょう。
皆さんの生活において、柔軟性が必要な動作とはなんでしょうか?案外少ないですよね?
日常生活において、関節可動域(ROM)をいっぱいに広げて行う動作というものがありません。
狩猟時代なら話は別かもしれませんが、テクノロジーが発達し、便利な時代となった現代では、関節可動域をいっぱいに使って生活することがないのが事実です。
そのため、ストレッチで必要以上に関節可動域が広がっても、あまり意味がないということになります。
例えば、仰向けに寝た状態で片膝を伸ばしたまま、ストレートレッグレイズのようにストレッチをするとしましょう。そのまま脚を上げていって、つま先が頭の方の床へ着くとします。いわゆる縦に行う股割りみたいなものですね。果たして日常で片足を頭の上まで上げる動作があるでしょうか?ないですよね。
つまり、ストレッチで縦股割りのような関節可動域を手に入れたとしても、日常で使わなければ無駄な可動域といえます。
身体を動かさないことで、歩幅が狭くなりすぎるとエネルギー効率も悪く、転倒の危険性も高まるので問題ですが、少しダイナミックな身体の動かし方をすることを意識していれば健康は保たれるでしょう。
ストレッチで必要以上に関節可動域を広げる事にこだわらなくても良いと言えます。

もちろんアスリートの場合はそうではありません。
競技特性として部分的に関節可動域を拡大させなくてはならないということは多いです。
競技で結果を出すためには、健康レベルを超えた必要以上に関節可動域を広げることもまた大切なのです。

関節可動域(ROM)を広げるメリット・デメリット

<メリット>
・主に高齢者のADL(日常生活動作)向上には効果的
・競技特性により、関節可動域を広げたほうがパフォーマンスが上がる
・見た目の美しさ

<デメリット>
・関節可動域を広げるのには、かなりの時間がかかる
・無理なストレッチで、靭帯を緩めすぎる可能性がある
・スタビリティが不足していると、バランスが悪くなり、パワーが落ちる可能性がある

高齢者など足腰が弱って動きが小さくなりすぎている方や、ヨガ、体操、フィギュアスケート、クラシックバレエ、ダンスなどを行っている方は、関節可動域を拡大するメリットがあると考えられます。
しかし、健康的な一般の方にとっては、関節可動域をむやみに広げる必要はないというのが事実です。
一般の方は、関節可動域を広げることではなく、他の目的でストレッチをすると良いでしょう。

関節可動域(ROM)をアップさせるストレッチのやり方

ストレッチは、関節可動域(ROM)をアップさせる方法の一つとして効果的です。
一般的なストレッチのやり方は、関節可動域を広げたエンドポジションで、15-30秒程度ホールドします。
関節可動域を増やすには、ストレッチを30秒×6セット行うと、パッシブ(受動的)な関節可動域がコンスタントにアップしたという研究データがあります。
特に1-4セット後が、関節可動域が多く増えるそうです。
関節可動域を広げるには、通常より比較的長い時間かけてストレッチするのが効果的なのです。

関節のポジションはボディーワークにおいて大切な要素

ただ関節可動域を広げるという発想ではなく、重要なのは解剖学の観点から、正しい位置に関節があることです。
骨格は、関節がいくつも重なり成り立っています。
関節+関節+関節…=骨格となるのです。
つまり1つの関節がズレてしまうと、その上にある骨格までズレてしまうことになります。
1つの関節の位置=ポジションが、他の関節にも影響を与えるのです。
”ニュートラルポジション”や”歪み”などの言葉も、関節のポジションを表しています。
トレーニングやストレッチ、コンディショニングにおいて、ポジションを考慮することは必要不可欠なのです。

関節ポジションがズレるとどのような影響がある?

関節のポジションがズレているとどうなるのでしょうか?
例えば、右のもも裏は硬い(関節可動域が小さい)けど、左のもも裏は柔らかい(関節可動域が大きい)といったことはありませんか?
この場合、身体の使い方によってズレてしまった関節のポジションが原因とも考えられます。
関節のポジションが正しくない場合、筋肉は骨についているので、関節(骨と骨のつなぎ目)がズレていれば、その関節についている筋肉の長さにまで影響を及ぼしてきます。
これが左右の筋バランスに影響を与えます。

上記の例の場合だと、左のハムストリングス(もも裏の筋肉)は長くなってハムストリングス(もも裏の筋肉)は短くなった状態です。
しかしこれだけで判断して、硬くなった右側のハムストリングスにひたすらストレッチをかけ続けるのは問題があります。
そもそも骨のポジションがずれていることが原因で筋肉の左右差が出ている可能性も考えられ、この状態で右側のみストレッチをかけ続けると、本来は左右とも同じ筋肉の硬さだったはずなので、右側だけがもっとゆるくなってしまうのです。

関節のポジションを考慮してアプローチを最大化する方法

例えば骨盤が歪んでいる状態でストレートレッグレイズを行なった場合、骨が歪んでしまっているために、本来は90°ある可動域が、片方はマイナススタートで片方はプラススタートということになります。

こうした関節のポジションの歪みの解決法は、筋肉のInhibition(抑制)と Activation(活性化)です。
正しい骨のポジションを手に入れるために、体位を変え、正しく筋肉を使い、そして使いすぎ(もしくは”その筋肉”が発火しやすい位置にあるのを抑制)の筋肉を抑制することです。
これには、呼吸を伴うエクササイズが必要です。

左右のポジションを考慮する時には、骨盤・下肢を重点的にみると良いでしょう。
骨盤・下肢には、数多くの筋肉の起始・停止(筋肉をパーツで考えた時、1つの筋肉の端と端)があるからです。
骨に付着している筋肉が硬ければ、その筋肉が骨を引っ張り、関節のポジションを変えてしまいます。
骨格の土台となる骨盤周辺が歪めば、他の関節にも影響を与えることは避けられません。

まず関節のポジションを評価し、短縮した筋肉を見極め、アプローチすることによって、ストレッチによる最大限の効果が期待できるのです。

ストレッチ効果を高める「柔軟性」と「固定性」とは?

関節可動域を制限していると思われる筋肉をストレッチしているのに、あまり変化が見られないといった経験をしている方は少なくないのではないでしょうか?
スタティックストレッチと呼ばれるような、関節稼働域を拡げるためのシンプルなストレッチだけでは、なかなか効果が引き出せない場合、ストレッチで効果を出せない原因が、
① 筋肉の「柔軟性」からくる問題
② 筋肉の「固定性」からくる問題
なのかを見極めることで、より簡単にアプローチすることが可能になります。

もし制限が、① 筋肉の「柔軟性」からくる問題であれば、様々なストレッチのテクニックを使って可動性を拡げることが効果的となります
例えば、「PNFストレッチ」や「相反性抑制」、「運動反射」等は、筋肉の反応をより効果的に引き出す事ができ、硬くなっている筋肉の柔軟性を改善することが期待できます。
しかし、思うような可動域の改善が見られない場合、その筋肉が付着している関節の柔軟性が十分にあるかどうかもチェックしてみましょう。
もし、関節そのものに可動域制限が見つかった場合、ストレッチ以外のアプローチ方法(関節モビライゼーションなどの関節に直接アプローチするテクニック)が柔軟性を回復させるための鍵となります。
つまり、このような場合は、従来のストレッチだけで大きな効果を得ることは難しいということです。

身体の「柔軟性」は、「固定性」があってこそ成り立っている

関節可動域の制限において、② 筋肉の「固定性」からくる問題が関わっている場合、関節可動域を拡げる為に、従来のストレッチとは少し異なるアプローチが必要となります。

まず、固定性の問題について簡単に解説します。
身体の「柔軟性」は、基本的に「固定性」があって成り立っています。
身体を支える土台、つまり「固定性」がうまく働かないと「柔軟性」にも大きな影響を及ぼすのです。
筋力トレーニングにおいて、この考え方は一般的なのですが、この考え方は、ストレッチの効果を引き出す時においてもとても重要です。
例えば、ハムストリングのストレッチで関節可動域に制限を感じた場合、「柔軟性」の問題にアプローチしてもあまり改善が得られなかったとします。この場合は、「固定性」の問題の可能性があると判断し、お腹周りを安定させるようなアプローチを取り入れてみましょう。
「両手で壁を押す」「軽いダンベルを手で持ち上げてその状態をキープする」「固定されたチューブを引っ張ったままキープする」などといった運動です。
こうして身体の末端にアイソメトリック収縮を加えることにより、ハムストリングを伸ばすための土台である身体の中心部が安定し、ハムストリングはより大きな可動域を発揮しやすくなるのです。
言い換えると、腹部を安定させて可動域の改善が見られた場合、可動域の問題は「柔軟性」ではなく「固定性」の問題が大きく影響していたと考えることが出来ます。

もちろん、「柔軟性」と「固定性」の両方が、関節可動域に影響していることもあるため、2つの要素を同時にアプローチすることも可能です。
例えば、背臥位(あおむけ)のストレッチで、ダンベルを片手で天井に向かって持ち上げてキープした状態で、硬い側のハムストリングをストレッチします。この時のストレッチ方法は、静的ストレッチでも、動的ストレッチでも構いません。「柔軟性」と「固定性」両方にアプローチすることによって、よりストレッチ効果は期待できます。

このように、シンプルなスタティックストレッチだけで効果を引き出せない場合、① の柔軟性からくる問題なのか、② の固定性からくる問題なのかを分けて考える事で、よりパーソナライズされたストレッチを提供できるようになるでしょう。

まとめ

・健康レベルにおいては、関節可動域を必要以上に広げる事に意味はない
・アスリートの場合、競技特性を考慮して関節可動域を広げる必要があるが、スタビリティとのバランスが大切
・関節可動域は広げるには、長い時間かけてストレッチするのが効果的

・関節のポジションを理解することは、ボディーワーカーにとって必要不可欠
・関節のポジションを整えてから筋肉にアプローチすることによって、ストレッチの最大限の効果が期待できる
・身体の「柔軟性」は、「固定性」があってこそ成り立っているため、固定性を高めるトレーニングも必要

やみくもに、身体を柔軟にしなければ!とは考えず、必要な範囲でストレッチを行うことが大切です。
必ずしも“身体が柔らかい”ことが身体にとって良いというわけではありません。
個々の目的に合わせて、あなたにとって必要な可動域を手に入れるようストレッチやトレーニングを取り入れることをおすすめします。

 

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この記事の著者
IBMA

監修者

IBMA

[公式HP]http://ibma.asia/

ボディメンテナンスに関する様々な資格の認定事業を行い、確かな知識と技術を持った専門家を育成。
今後はアジア各国を中心とした啓蒙活動も視野に入れ、国際的な格調ある資格団体を目指している。
様々なボディメンテナンスの現場に携わる専門家を育成し、相互研鑽を通じて専門性を高め、世界にセルフメンテナンスの普及を図り、社会貢献していくことを目的としている。

[主な認定資格]
・IBMA認定ヨガインストラクター資格
・IBMA認定ピラティスインストラクター資格
・IBMA認定パーソナルストレッチトレーナー資格
・IBMA認定パーソナルトレーナー資格
・IBMA認定タイ古式マッサージセラピスト資格


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様々なボディメンテナンスの現場に携わる専門家を育成し、相互研鑽を通じて専門性を高め、世界にセルフメンテナンスの普及を図り、社会貢献していくことを目的としている。

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